越谷家の(特になっつんにとって)コワいコワい母ちゃんや、素っ気なく振舞おうとしてもれんちょんのことが気にかかってしまう駄菓子屋などがそう。最初に感じた柔らかさとはゆりかごの中の柔らかさだったのかもしれません、豊穣をもたらし新しい生命を育む理想的な田舎の姿がここにはあります。
主要キャラの4人はお調子者だったり背伸びをしたりとごくごく普通の子供だし、集まればゲームをしたりお洒落の話に興じたりで、やっていることは田舎ならではのものもあれば、都会も田舎も変わらないものもありますが、当人たちはそんなことは意識することもなく、OPの曲調そのままに、ただ全力で子供の時間を生きています。また、ほたるんのコマちゃんに寄せる思いも百合くさいネタになっていますが、それとともに何かとポンコツなコマちゃんをあれこれフォローするのは、視点を一歩引いて観ればやはり母性なんだなと思います、歳は2番目に下ですが背は一番高いですし、胸も(以下自粛田舎というと過疎とか不便だとかダサいとか、あるいは衰退していて貧しいとかいうイメージを持たれるかもしれませんが、本来は豊穣をもたらす場であるということこそが田舎の大きな役割です。
そしてれんげや蛍や夏海や小鞠達が、いつもその空気を呼吸しているのが羨ましくなります。田舎が舞台なので登場するキャラの家もほとんどが農家ですが、その家の造りからして外見から部屋の間取りから、なんでもないような調度品から、旅行でその場のノリだけで買ってきたようなヘンな置物まで、サラリーマン家庭に育った身からすると、みんなどこかしら懐かしいような妙に風格があるような、普段目にするものとは違う感じがして、ちょっとしたエトランゼ気分や、お泊りしてみたくなるような気分を味わえます。
また母親に叱られてゴメンナサイと頭を下げたら、後ろの開け放たれた障子から見えるのがあざやかな田園風景だったりするのがなんともステキで、普段と違う良い空気を呼吸している気分にさせてくれます。田舎を舞台にした日常物作品ですが、その感触は「ほのぼの」というよりも「柔らかい」と表現するほうが合っているようで、何か大きなものに包まれているような心地よさがある作品です。
でもこの作品では視点をグッと引いて観ると、田舎の豊かな情感がそれらを包み込んでひとつの絵のように感じられてきて、全ては田舎という大きなゆりかごが、その中で子供に与える大事な経験なのだというふうに思えてきます。この作品を観ていて気付くのは大人の存在感があるということ、よくある日常系のように大人の気配が希薄で作品世界が子供だけの領域化しておらず、大人の、なかでも母親的な立場の人の存在感が大きいということです。
ここは豊かな場所なんだなと思えてきます。そして母親の存在感がそれと結びつくことで、この作品においては田舎が持つ母性が際立っていて、全てを束ねているように思います。
いちばん年下のれんちょんに関係する物語には特にそれが強く感じられますし。鳥の囀り、
四季折々の虫の声、水の流れる音、これらの音にほとんど環境音楽のような控えめなBGMがついて、田舎の情感がじつに豊かに表現されていることに心を奪われてしまいます。DVDコレクションします。